淺山 泰美 (あさやま ひろみ)
<経歴>
1954年、京都生まれ、京都在住。
詩集『水槽』『月暈』『ファントム』。
エッセイ集『京都 銀月アパートの桜』、『京都 桜の縁し』。
小説集『エンジェルコーリング』。
CD『ミセスエリザベスグリーンの庭に』。
日本文藝家協会、ライアー響会、各会員。
「コールサック」に寄稿。
<詩作品>
美しい丘
気高い ひとすじの
歌声に送られて あなたは
美しい丘をめざす
長いスカートの裾を曳き
たいそう軽い足どりで
丘の上の 小さな
白い建物は
小鳥たちの聖堂
光の柱が三本 そのほかには
何もない そこ
したたるような緑に呼応して囀る声が丸い天井に響く
祈りは風に乗り どこまでも行く
見えない種子のように
なだらかな丘に降り注ぐ
虹よりも明るい
こぬか雨に プラチナの髪が濡れて
あなたは
この生涯で 一番
貴い姿で
丘のむこうに 消える
冬から春へ
メジロが
冬の裏庭に咲く
サザンカの花の蜜を求めて
つがいで訪れる
鳴きかわし 低い枝から枝へとわたり
また
冬の空へと 飛び去ってゆく
つかのま
雪でもなく
霙でもない
細かなものが
舞い落ちる
まるで
あのメジロたちだけが
春がやってくる方角を知っているかのように
今年は
風邪をひきたくなくて
毎日
エキナセアのあたたかい
お茶を欠かさず飲んでいた のに
朝からくしゃみを連発
今日は
外出を取りやめ
また
もう一杯
エキナセアのお茶を飲んでいる
たまには
風邪をひくのも悪くはない
けれど
やはり
風邪を一回ひくよりは
ひとつでも
詩を書きたい
わたし